iPX社員によるブログ

iPX社員が"社の動向"から"自身の知見や趣味"、"セミナーなどのおすすめ情報"に至るまで幅広い話題を投下していくブログ。社の雰囲気を感じ取っていただけたら幸いです。

たまには趣向を変えて

はじめまして。
4月に入社したおのまです。

少し自己紹介

3月までは大学院生をやっていました。
専攻は理論宇宙物理学で、宇宙の構造のシミュレーションをやっていました。
ダークマターとか、そういうかっこいいやつです。
宇宙の暗黒時代とか、ダークエネルギーとか、ガンマ線バーストとか、とにかくよくわからないかっこいい単語を真面目に研究する分野です。
ちなみに宇宙物理学の用語がどうしてかっこいい単語ばかりなのかはきちんと理由がありますが、機会があればお話します。

4月からは、iPXに入社して、現在は工学寄りの方面や、ソフトウェアの使い方などを修行中です。

私の専門とは全く関係ないのですが、僭越ながら日本の古典文学の代表格、源氏物語のお話を少ししようと思います。

源氏物語ってなんだっけ?

源氏物語は、誰もが知る平安文学の金字塔です。
高校の古典で習った方も多いのではないでしょうか。
(実は私は習った覚えがあまりない上に、センター試験でも2次試験でも源氏物語はほとんど出ないので、大学入るまでほとんど知りませんでした)

作者は、紫式部と言われておりますが、本名はよくわかっておりません。
(そもそも当時の女性は本名を知られる=結婚でした)

私が語れるほど浅いものではなく、とにかくすごい物語です。
何百年も前からこの物語に関する研究がずっと行われているのに、まだ研究が出尽くしていないんです。
きっと、紫式部さんも草葉の陰でびっくりしていると思います。

流石です光源氏

主人公の光源氏の簡単なプロフィールをざっくり書いていこうと思います。
光の君と言われるほどのイケメン、学問は宮廷の博士たちも敵わぬ博識、楽器を弾けば聞いている人は皆感動のあまり涙を流す腕前、当時貴族の恋愛に不可欠だった書道と和歌も超一流、そして武術は天下無双の強さ、さらに天皇の息子で大富豪……と、改めて書くとライトノベルの主人公もびっくりですね。
あと足りないものは、流石ですお兄さまと言う妹がいないことくらいです。
(ちなみにあの妹さんの容姿には実は個人的に見覚えがあります)

当然、そんな完璧超人光源氏を周囲は持て囃し、源氏物語の語り手である彼の女房も、幾度となく彼を褒め称えます。
読み進めていくとわかりますが、少々胸焼けがしてきます。
幾つか例を挙げますと、成長すれば「なお一層光り輝くようにお美しくなり」と言ってみたり、誰かのお葬式で喪服を着れば、「喪に服している姿は恐ろしいほどに美しく、死んだあの方と一緒に黄泉へと連れて行かれて行かれないか心配になる」などと、ずっとこんな調子で源氏を持ち上げる話が続いていきます。
読めば読むほど、本当に主人公が強いライトノベルにそっくりです。

紫式部男性疑惑(?)

この作者の紫式部さんですが、もちろん源氏物語を書き上げたことそのものがとてつもなくすごいことなのですが、個人的には「男性の心」への理解に驚いています。
彼女は女性(とされている)なので、本来男性の心根の部分はわからないと思うのですが、箒木の巻で行われる雨夜の品定めのエピソードでは、かなり生々しい男性同士の井戸端会議を描いています。
この辺りは夏目漱石の「吾輩は猫である」にも言えますが、彼女はきっと周りの男性のことを人並みならぬ観察をしていたのだと思います。
やはり、歴史に名を残す方は違いますね。

私の思うこのお話のテーマ

これは「母の愛を求める男の物語」だと個人的には思っています。

光源氏は幼い頃に母親を亡くし、それからしばらくは祖母と暮らしていました。
そして宮廷に引き取られて、育っていくわけなのですが、ここで母親とそっくりだと言われていた藤壺という義母(=帝の妻)と仲良くなります。
周りが実母に何から何までそっくりだと言うので、彼の求めていた母親像を藤壺に重ねていきます。
義母といっても源氏と年齢は大して変わらないこともあってか、だんだんそれは光源氏の中で強烈な恋心となって彼を苦しめます。

実は面白いことに、彼の恋人や妻は年上、もしくは年上の性質をもった女性が物語序盤では多いのです。
一人目の正妻の葵の上も、途中から彼に嫉妬するあまり生霊を生み出してしまうことで有名な六条御息所も、みんな年上です。(他も、人妻の空蝉だったり、子持ちの母の夕顔だったり)
彼の最も有名なエピソードである若紫の君の拉致事件も、彼女が藤壺の血縁者で、藤壺の面影を感じさせることが大きな理由になっているので、彼が単純に幼い女性が好きだったというわけではないように思えます。

つまり彼は、永遠に母親の幻想を追いかけて、数々の女性を口説き落としていたということになります。
これに付き合わされた方も大変ですね。

ちなみに当時の貴族の女性が書いた日記文学を見ると、貴族の男性は光源氏に似たようなことを散々やっていて、寂しい、つらい、会いたくて震えるといったことを延々と綴ってあります。
今も昔も日記に書くことなんて変わりないことがわかります。

こう考えると、源氏物語も少しは違って見えるのではないでしょうか。

私も大学受験の頃は古文は苦手でした。
助動詞のあたりまではきちんと覚えたのですが、どうにも助詞が難しかった覚えがあります。
しかし改めて触れてみると、古典文学、面白いですよ。

近頃は源氏物語だと「源君物語」、枕草子だと「姫のためなら死ねる」といったパロディ作品も増えていて、手軽に楽しむ機会が増えたと思います。
平安文学ブーム、来ないかなぁ……。

長くなりましたが、以上です。