iPX社員によるブログ

iPX社員が"社の動向"から"自身の知見や趣味"、"セミナーなどのおすすめ情報"に至るまで幅広い話題を投下していくブログ。社の雰囲気を感じ取っていただけたら幸いです。

100年前…

iPX VFDUのベーカーです。
いつ初めてこの話を聞いたのかはもう忘れているが、その印象は今にも残っている。
100年前のアメリカ中西部は現在のように農業経済中心だったが、街並みが今と大分違ったそうだ。20世紀の始まりには、農地と牧場の景色の中に小さい町が点在していた。
そこにフランクフォートという町があった。小さな田舎町だったのにあまり不便じゃなかった。デパートが4つ、銀行が6つ、競馬所もオペラハウスもあって、町だけの新聞まであった。住んでいるのは千数百人程度だけなのに、欲しいものが町の中に全部そろっていた。
でも、フランクフォートは特別じゃなかった。20キロほど離れている場所に別の町があった。そこに別のデパートと別の新聞と別のオペラハウスがあった。
「20キロ」の距離は偶然じゃなかった。それは一頭立て馬車が苦労なく日帰りできる距離の限界だといわれている。生活のすべてが文字通り馬力で動いていた。オペラハウスの演奏者たちが馬車で来て、数日たったらまた馬車で次の町へ移動していた。馬は農地でも活用されていて、馬より大事な動物はいなかった(今にも、アメリカで馬を食べたりする話さえがまだタブーだ)。

1910年代初頭、フォードのモデルT自動車がフランクフォートにやって来て、すべてが変わった。最初は皆が大喜びだった。町内や隣町なら馬車を使えば十分だが、自動車があればより遠い場所へ行けるようになった。こういうふうに馬と自動車が共に使えるから、きっとこれから豊かに暮らせると皆が言った。自動車をフランクフォートに持ってきた人は、ヒーロー扱いだった。

しかし、自動車ですべてが変わってしまった。1920年に最後のデパートが閉店になった。皆が買い物するときに都市に行くことになった。銀行は一か所を残してすべてつぶれた。オペラハウスにおいては、建物さえ残っていなかった。習慣が変わった。文化が変わった。自動車の時代が始まったから、古いやり方がもう通用しない。
フランクフォートの人口もほぼ3割減った。農地は燃焼機関の機械があったから、小数の労働者で十分だった。その人たちも、都市に住みながらバスで通勤ようになった。

そして今も…

自動車による大改革はすでに約100年経ち、ほとんど忘れられている。今はまた別の大改革の最中だ。インターネットがこの町に来たせいで、今までのような暮らし方は通用しなくなるのは時間の問題。
2010年7月、スペインがワールドカップで優勝した一週間後、僕はNHKに電話して契約をキャンセルした。テレビ放送はもう見ていないことが気づいた。その変わりにフールーを使っていた。今にも「テレビ」という機械は持っているがアンテナは繋いでいない。番組や映画を観たいときは、今はフールーだけでなくてネットフリックス、バンダイチャネル、アマゾンプライム、色んな選択がある。100年前のフランクフォートの町民たちがどうやって不満を感じずに馬車を使っていたかがようやくわかったかもしれない。20年前の僕は、テレビ放送に満足していた。決まった日の決まった時間にテレビの前にいなかったら番組が見れなかった。スケジュールを知らない人に任せた。それは今考えたくないことになった。僕にとってはもう通用しない。習慣が変わった。

インターネットの大改革

僕が前回このブログに記事を書いたとき、クラウドファンディングについて話した。今回はどちらかというとその続きを書かせてもらいたい。クラウドファンディングやネットテレビはインテネットの陰で社会が変わったことのいい例だが、それ以外にも少し紹介したい。

買い物

クラウドファンディングのビジネスモデルが少しずつ広まっている。一つの例がアンバウンド(www.unbound.co.uk)。独立系出版社で本を出す前に著者と一緒にネットでアピールをして、サポーターが集まれたらそのときに印刷開始。それで出版社の仕事はもう前のようにギャンブルじゃなくなった。必要だったら欲しい人の人数分だけ印刷してもいい。

「人数分だけでいい」というビジネスモデルを使っている会社はティースプリング(https://teespring.com)。カスタムTシャツは多くの場合で少数で高い。しかし、ティースプリングがクラウドファンディングやSNSを利用して自分が作ったデザインをなるべく多くの人を買わせるようにしてくれる。買ってくれる人数が足りれば、その数の商品を作って配布する。最近チャリティーが募金活動として使っていることが増えている。

エッツィ(www.etsy.com)は自分のことを「P2Pマーケットプレース」と呼んでいる。手つくり物を中心に、誰でも30セント(米)さえあれば自分が作ったものをエッツィのサポートで販売できる。

交通

最近話題になっている会社、ウーバー(www.uber.com)は個人タクシーの新しい姿。予約から会計まで、全部スマホの専用アプリで行う(距離を測るのもアプリで)。値段は時間と距離だけでなく、運転手の数と乗りたい人の数の割合で設定できるアルゴリズムを使っているので運転手にもお得になる。
もう一つのプラスポイントは割り勘するときである。複数人が同じウーバー車に乗ると誰がいくらになるかは全部自動で計算される。降りる場所や乗る場所が違っても。それで会ったこともない人とタクシーシェアもあり得るだけでなく、これがありがたいことになるかもしれない。

宿泊

21世紀に旅行をするときに泊まる場所がホテルでないかもしれない。エアビーアンドビー(www.airbnb.com)で自分の空いている部屋があれば簡単に旅人に貸し出しができる。このサービスは、子供が大学に行ってしまった夫婦がその部屋で副収入得られるなんてことができる。たまにエアビーアンドビーで空いている家を丸ごと借りることもできる。
門限をはじめとするルールはすべて指定ができて、サイトに書かれている。あと、その気になれば追加サービスがあったりする。自慢の家庭料理をふるまってくれる人や観光地などに案内してくれる人もいる。場所によっては、それに行ったらその1、2週間はそこの家族の一員になれる。

そしてこれらも…

大改革はいつも嵐のようだ。まずは稲妻が光る。新しいものに皆は目がくらむ。そのあとに目の前のものが雷の音で破壊される。
それは必然のようだ、雷と稲妻は実は同じ物だから。始まりは同時だけど、速度は違うから来るときは違う。でも、稲妻が来たら、雷も来ているという意味になる。タイミングの差で大改革の嵐はどれだけ近いかがわかる。そして、稲妻が眩しいほど稲妻がうるさくなるのだろう。

フランクフォートは消えていなかった。ネットで調べてみるとまだ存在している。しかし、人口が100年前の半分以下になってしまって、今も減り続いている。町に仕事がほとんどなくて、半分くらいの人が離れている都市に毎朝通勤している。それにスーパー以外の買い物もすべて都市に行かなければいけない。

もちろん自動車で