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制御工学 システムのアナロジーのお話し

目次

ご挨拶

こんにちは。
カワグチです。

梅雨も明け、本格的な夏をむかえましたが、いかがお過ごしでしょうか。
多くのみなさまと同様、私も外出を控えて過ごす日々を過ごしています。
趣味の一つが旅行である私にとっては、これからの1,2年は残念な年になることが予想されます。
ともあれ、最近は新たな趣味としてランニングを始めたり、先日はオンラインコンサートを初めて観覧するなど、差し障りのない範囲で新しいものごとに触れることができています。
また、自習に使える時間も増えたことからプログラミングや強化学習、制御工学の書籍を読むことができています。
今回は制御工学の書籍から、私が(言われてみれば当たり前だけど)とても重要だと感じたこと・及びその具体例についてまとめます。(つまり、私の復習です)
制御工学に興味がある方・これから学ぶ方はご参考に、
既に修了されている方は(もしよろしければ)ご指摘などいただけますと幸いです。

制御工学 システムのアナロジーのお話し

さて、制御工学から「システムのアナロジー」についてお話しようと思います。
参考にした書籍はこちら。https://amzn.to/2X0NbtM
「はじめての制御工学」*1です。
制御工学の学習でお世話になった(なっている)方も多いのではないでしょうか。
かくいう私もその一人です。
他書籍と比べて、内容がわかりやすく式の展開も丁寧、というのが私個人の感想です。

システムのアナロジーとは

さて、システムのアナロジーとは何か。
書籍によると、

機械系のモデルでも電気系のモデルでも微分方程式が同じ形式であれば、伝達関数は同じ形式となる
このような性質を、機械系と電気系の類似(アナロジー)という

とのことです。
この性質で重要なことは、

モデルの違いによらず一般形でシステムの特性を理解しておけば、類似したモデルであれば一般形で得られた知識が使える
機械系の制御、電気電子系の制御ではなく、一般形として制御工学があり、その中身を理解しておけばどのような種類のシステムでも関係なく、制御工学の知識が適用可能である

ということです。

具体例

書籍から具体例を抜粋します。
また、本項は下記の流れで記載します。
定義    :記号とその意味

数学モデル :入出力を伴う物理システムの数学モデル

ラプラス変換:数学モデルをラプラス変換、かつ左辺を出力としてまとめる

一般形   :ラプラス変換後、一般形に変換

説明    :一般形の説明

定義

  • 1階微分微分すること
    下記に例を記載する
    $$ \frac{dx(t)}{dt} $$
  • 2階微分微分して得られた導関数をもう一度微分すること
    下記に例を記載する
    $$ \frac{d^2 x(t)}{dt^2} $$
  • 1次遅れ系:伝達関数の分母のsが1次多項式となるもの
    下記に例を記載する
    $$ \frac{1}{J_cs + B} $$
  • 2次遅れ系:伝達関数の分母のsが2次多項式となるもの
    下記に例を記載する
    $$ \frac{1}{Ms^2} $$
  • 伝達関数:入力と出力の関係を表すもの。参考書籍では下記の通り記載されている。

    動的システムの特性において、すべての初期値を0とした特性の別表現

  下記に例を記載する
$$ X(s) = \frac{1}{Ms^2}F(s) のこれ→\frac{1}{Ms^2}$$

  • 記号とその意味
記号 意味
x or X 位置
Θ 回転角
ω 回転角速度
M 質量
J 慣性モーメント
f or F
τ トルク
B 粘性摩擦係数
L インダクタンス
i or I 電流
R 抵抗
v or V 電圧

数学モデル

  • 2階微分方程式
    • 式A-1
      • 機械系モデルでの直線運動に関する式 
    • 式B-1
      • 機械系モデルでの回転運動に関する式
  • 式A-1 $$ M\frac{d^2x(t)}{dt^2} = f(t) $$

  • 式B-1 $$ J\frac{d^2Θ(t)}{dt^2} = τ(t) $$

  • 1階微分方程式
    • 式C-1
      • 電気系モデル 電機子回路内を流れる電流に関する式(RL回路)
    • 式D-1
      • 機械系モデル 電機子コイルの回転各速度に関する式
  • 式C-1 $$ L_a\frac{di_a(t)}{dt} + R_ai_a(t) = v_a(t)-v_b(t) $$

  • 式D-1 $$ J_c\frac{dω(t)}{dt} + Bω(t) = τ(t) $$

ラプラス変換

すべての初期値を0とおいてラプラス変換すると、

  • 式A-2 $$ Ms^2X(s) = F(s)$$ $$ X(s) = \frac{1}{Ms^2}F(s)←式A-2 $$

  • 式B-2 $$ Js^2Θ(s) = τ(s) $$ $$ Θ(s) = \frac{1}{Js^2}τ(s)←式B-2 $$

  • 式C-2 $$ L_asI_a(s) + R_aI_a(s) = V_a(s)-V_b(s) $$ $$ (L_as + R)I_a(s) = V_a(s)-V_b(s) $$ $$ I_a(s) = \frac{1}{L_as+R_a}(V_a(s)-V_b(s))←式C-2 $$

  • 式D-2 $$ J_csω(s) + Bω(s) = τ(s) $$ $$ (J_cs + B)ω(s) = τ(s) $$ $$ ω(s) = \frac{1}{J_cs + B}τ(t)←式D-2 $$

一般形に変換

  • 式A-3 $$ Y(s) = X(s) , U(s) = F(s) とする$$ $$ T = Mとする$$ $$ Y(s) = \frac{1}{Ts^2}U(s)←式A-3 $$

  • 式B-3 $$ Y(s) = Θ(s) , U(s) = τ(s) とする$$ $$ T = Jとする$$ $$ Y(s) = \frac{1}{Ts^2}U(s)←式B-3 $$

  • 式C-3 $$ I_a(s) = \frac{1}{L_as+R_a}(V_a(s)-V_b(s)) $$ $$ I(s) = I_a(s), L = L_a, R = R_a とする$$ $$ V(s) = V_a(s)-V_b(s) とする$$ $$ I(s) = \frac{1}{Ls+R}V(s) $$ $$ I(s) = \frac{1}{R(\frac{Ls}{R} + 1)}V(s) $$ $$ I(s) = \frac{1}{R}*\frac{1}{\frac{Ls}{R} + 1}V(s) $$ $$ K = \frac{1}{R} とする$$ $$ T = \frac{L}{R} とする$$ $$ I(s) = \frac{K}{Ts + 1}V(s) $$ $$ Y(s) = Θ(s) , U(s) = τ(s) とする$$ $$ Y(s) = \frac{K}{Ts + 1}U(s)←式C-3 $$

  • 式D-3 $$ ω(s) = \frac{1}{J_cs + B}τ(s) $$ $$ ω(s) = \frac{1}{B(\frac{J_cs}{B} + 1)}τ(s) $$ $$ ω(s) = \frac{1}{B}*\frac{1}{\frac{J_cs}{B} + 1}τ(s) $$ $$ K = \frac{1}{B} とする$$ $$ T = \frac{J_c}{B} とする$$ $$ ω(s) = \frac{K}{Ts + 1}τ(s) $$ $$ Y(s) = ω(s) , U(s) = τ(s) とする$$ $$ Y(s) = \frac{K}{Ts + 1}U(s)←式D-3 $$

説明

式A-2, B-2から、伝達関数の分母はともにsに関する2次多項式であり、係数のみが異なることがわかる。
そのため各係数を適切に置き換えれば、式A-3, B-3の式で表すことができる。

$$ 式A-3, B-3:Y(s) = \frac{1}{Ts^2}U(s) $$

同様に、 式C-2, D-2から、伝達関数の分母はともにsに関する1次多項式であり、係数のみが異なることがわかる。
そのため各係数を適切に置き換えれば、式C-3, D-3の式で表すことができる。

$$ 式C-3, D-3:Y(s) = \frac{K}{Ts + 1}U(s) $$

まとめ

まとめますと、
システムのアナロジーとは、

機械系のモデルでも電気系のモデルでも微分方程式が同じ形式であれば、伝達関数は同じ形式となる

性質のことであり、

機械系の制御、電気電子系の制御ではなく、一般形として制御工学があり、その中身を理解しておけばどのような種類のシステムでも関係なく、制御工学の知識が適用可能である

ことが重要なのでした。 また、具体例から機械系・電気系に問わず一般形の式で表すことができることを確認しました。

結び

以上、今回は「システムのアナロジー」についてまとめました。

反省点としては、文字ばかりになってなかなか読みづらいというところでしょうか。。。
はてなMarkdownが書きづらいというより、VSCodeMarkdownが書きやすいのか。
一通り確認しましたが、誤字・脱字などありましたらご指摘ください。
また、本投稿は書籍の引用について調べて記載しておりますが、万が一問題があるようであれば該当箇所を削除致しますのでご連絡いただけますと幸いです。

*1: 佐藤 和也, 平元 和彦, 平田 研二, 「はじめての制御工学 改訂第2版」, KS理工学専門書,