iPX社員によるブログ

iPX社員が"社の動向"から"自身の知見や趣味"、"セミナーなどのおすすめ情報"に至るまで幅広い話題を投下していくブログ。社の雰囲気を感じ取っていただけたら幸いです。

クレイジー・エイッツと公正な文化

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CSX 8888 (Stanley Yard, OH)

今回のiPXブログ担当のベーカーです。今回のストーリーはちょうど18年のことでした。

2001年5月15日のウォルブリッジ村が風のない、晴れている日でした。オハイオ州だから、5月にもちょっと寒かったですが、爽やかでした。
こんな平凡な景色に「CSX 8888」というディーゼル列車が47車両を引いて、村にある操車場を出ました。

CSX 8888に乗っているのは有害化学物質。乗っていないのは…運転手。

「クレイジー・エイッツ」と呼ばれている恐ろしい暴走列車大事件が既に始まりました。

でも、ウィキペディアで調べたら、事件の原因が「オペレータエラー」 ですが、その「オペレーター」が口頭注意さえ受けないで、事項報告書に名前が載っていません 。僕にとってこれがクレイジー・エイッツ事件の最も面白いところかもしれません。なぜそうなったかが今回のブログの出発点として使いたいと思います。


午前11:30頃にスタンレー操車場にいるエンジニアに依頼変更の知らせが来まして、それに合わせて担当している列車を動かし始めました。

これで問題が発生しました。列車の前のスイッチ方向が間違っています―行くべき方向じゃなくて、出口に向いています!

スイッチまでに止められないと知っているエンジニアが自分の30年以上の経験で早く案を考えました。まずはブレーキを設定して、それで列車を降りてスイッチまで走ることにしました。列車が今20km/h以下で、ブレーキで減速させたら、エンジニアが先にスイッチに着くはずです。

CSX8888のような列車のブレーキシステムはダイナミック・ブレーキ(発電ブレーキ)を使っている空気ブレーキになっています。しかし、操車場内は空気ブレーキがつないでいないということです。空気ブレーキが取り付けられていない間にダイナミック・ブレーキを起動すると、その電力がブレーキじゃなくて、駆動の方にいってしまいます。降りて走っているエンジニアが減速じゃなくて、加速している自分の列車の姿を見てそれを気付いたようでした。

デッドマン装置ももちろんありました、でもブレーキが設定しましたから無効になっていました。

CSX8888という暴走列車を止められるまでの2時間の間に役170㎞を走ったそうです。

では、この事故を責任取るべきは以下の誰でしょうか?

  • エンジニア本人(頑張って問題になる前に必死で解決しようとしたのに…)
  • 空気ブレーキを繋がらなかった人(教わったやり方通りやっていただけなのに…)
  • スイッチを変えていなかった人(変えるように指示されなかったのに…)
  • 指示をしている上司(自分が分かっている現状で支持をしただけなのに…)

最終判断は… 責任を取るべき人が一人もいなかった。

Just Culture

これは「Just Culture」と呼ばれています。問題発生するときに「犯人捜し」を優先してしまうと、再発防止が忘れられたりすることだけじゃなくて、怒られることに恐れている人は逃げたり隠そうとしたりすることをしてしまう可能性があります。それがあると小さな問題がすぐ大きな問題になる恐れです。

後、「再発防止活動」が罰の一つと間違って考えている人もいます。一人のミスだけで崩れるシステムが最初から弱すぎます。それで、システム向上活動がシステムにかかわっている人全員一緒にやるべき作業と考えられます。

Just Cultureの考え方が以下のようになります:

"Just Culture" is a culture in which front-line operators and others are not punished for actions, omissions or decisions taken by them which are commensurate with their experience and training, but where gross negligence, wilful violations and destructive acts are not tolerated.
Just culture | Eurocontrol

つまり、罰を与えるか与えないかは人次第になります。何でその人があれをやってしまったかが重要になります。もちろんわざとやりましたら(上に書いてある「重大な過失、故意による違反、破壊的な行為など」)大きな罰を与えるべきですが、「うっかりミス」に準じることはやった人本人じゃなくて、そのミスで問題になるシステムが悪いと判断します。

Just Cultureの導入のサイトに書いてあるのは:

罰金や免許の停止によって人を罰することは、現場の人々がいかなる種類の過ちを報告することからでも落胆させ、その結果として安全性情報が減少することにつながる。

それが一番重要と思います。本当に報告するべきことだと考えていたら、報告しやすくしないといけないですね。

実はこれがより広いテーマの一つだけです。「動機付け理論」や「システム靭性」は皆が一緒に考えるべきこと。また改めていつかこのブログにモチベーションも「スクラム」も書かせていただきたいと思います。

スタンレー操車場ではクレイジー・エイッツ事件の再発防止としてただガイドラインにコメント一つ追加しただけです:「先に間違ったスイッチがあって、前に停車できない場合は取り敢えずブレーキをかけて、間違った方向に行っても、完全に停車したらスイッチの場所までリバースしてから方向を修正する。」

罰を与える必要もなく、ルール変更の必要もなく、ただアドバイスとトレーニングの追加で同じ原因の暴走列車がもう起きにくくなりました。
(もちろん、数年後に使用している列車をアップグレードした時によりいいデッドマン装置も整備しました。)