iPX社員によるブログ

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初夏の植物ばなし

 こんばんは、mmと申します。
 私にとっては二回目のブログ記事投稿ですが、早いものでもう入社して一年を過ぎてしまいました。
 日々反省と勉強との繰り返しですが、ニューラルネットワークと戯れる日々は楽しいものです。

 前回に引き続き、今回もこの頃の花のことでも話そうと思います。
 外出自粛の日々ではありますが、やはり五月の空気は最高ですね。一年で最も好きな時期です。



 実際のところ、「今日この頃の花」と言ってしまうと大変なことになるほどに花盛りの時期です。自生している花も庭先に整えられた花も次々に咲くため取り上げるのは難しいのですが、せっかくなのである程度身近な中でも少し変わり者な花を紹介してみます。
 とはいえ写真を付随させないスタンスですので、どのくらい変わり者かは気が向いたら調べてもらうということにさせてください。


 よく庭先で見かける中で、平たい五枚花弁の紫色と白の花を咲かせているニオイバンマツリをご存知でしょうか。木ではあるのですが小さく仕立てることも可能なので、割といろんなお家で育てられています。
 明るめの紫の花と白い花が混在しているのでそれなりに目を引くのですが、別にニオイバンマツリは二色に咲き分けをするわけではありません。もちろん、二株を並べて育てているのでもありません。
 ニオイバンマツリの花は開花してすぐは紫色をしているのですが、それからしばらく経つにつれて真っ白な色に変わっていくのです。
 これは単にしおれていくというわけではなく、自らの酵素で色素を反応させ、意図的に白くなっているものです。そのため開花期のニオイバンマツリは明確に紫と白が並びあって鮮やかに見えるのですね。
 名前の通り芳香もあって素敵な花です。ちょっと毒があるのでその点は注意ですが。


 ニオイバンマツリのように色が変化する花も色々あります。品種によっては色が変わる、とか、周囲の環境で色が変わる、というものもあるのですが、やはり咲いてからどんどん色が変わっていくものに興味を惹かれるところがあります。


 もう少し夏ごろに開花していることが多いニシキウツギも、ニオイバンマツリに似たような色の変化を見せます。
 五枚花弁のラッパのような形の花をいくらかまとめてつけるのですが、これは白い色で咲き出して、しばらく経つと赤ワインで染めたような紅色に変わっていきます。
 これも咲き出す時期がわずかずつずれるため、まとまって咲いた花が白から紅色の間で様々な色合いを見せていることが多く、目を引きます。
 低木ながら少し大きく育つため、ニシキウツギを見るのは庭先というよりは公園などが多い印象です。そうした場所で紅白に咲いている木があれば、ニシキウツギかもしれません。
 ちなみに二色空木という名前だから二色に咲くのかと思いきや、近縁なハコネウツギも同じような色変わりをするそうです。ちょっと変な感じですね。


 また、スイカズラというつる植物も二色に色が変わっていきます。
 金銀花という別名があるくらいで、茂った葉の合間からくるりと反り返って咲く花々は明るい黄色で咲き出して、時間が進むにつれて真っ白に変わります。
 つる植物にしては何となく行儀のよい、平たく並ぶように葉が折り重なっているところに、おしべめしべを長く伸ばして縦向きに花弁を反り返らせて咲くので、何となくろうそくの火などがともっているような不思議な印象を与えるのが魅力的です。


 庭先の常連の一種、ランタナもそうです。ピンクや黄色やオレンジなどの色をして、小さな花を花束のようにまとめて咲かせている茂みを見たことはありませんか?
 ランタナは和名をシチヘンゲというだけあって、その色の変わりようはなかなかわくわくさせられます。
 花束のようなまとまりの外縁側から咲いていくのですが、これが白や淡黄色で咲いてきてからピンク、オレンジ、赤へとどんどん変わっていきます。
 茂みのように育ったあちこちでばらばらにその変化が起きていくので、日々見るほどに鮮やかに様子が変わっていってとても楽しい植物です。
 果実も青いメタリックカラーとなかなか個性的ですが、これも鳥以外には毒になるそうです。さらにはよく実り鳥に運ばれるせいで各地で侵略的な外来種にもなってしまっています。いろいろな意味で目立つ植物だと言えそうです。


 色がどんどんと変わるのは、「いろいろな客を呼び込みたいから」だと言われています。花の色によってそれを好む虫などが大きく変わるからです。
 例えば黄色ならハナアブやカナブン、赤なら蝶の類、紫なら蜂の仲間で、白は蛾などの夜飛ぶ虫、といった具合ですね。



 色の点で変わり者の花々を紹介してみましたが、せっかくなので形が変わり者な植物もいくつか。


 トケイソウはご存知でしょうか。名前くらいは聞いたことがあるかもしれません。
 トケイソウはつる植物で、しなやかなつるが繁茂したところにとても特徴的な花を咲かせます。初めて見るとちょっと混乱するような、インパクトのある風体をしています。それほど大きな花ではないですが、それこそヒマワリくらいの大きさで咲いていたならおびえてしまいそうな姿です。
 三つに分かれた屈強そうなめしべに、五本並んだ同じく屈強そうなおしべ。副冠と呼ばれる細い針のような長い花びら状の器官が周囲をぐるりと取り囲んでおり、ものによってはこの副冠は同心円状に鮮やかな白、紫、ピンクなどに塗り分けられていたり、その細いすべてがぐねぐねと折れ曲がっていたりします。さらに外側には五枚の花弁と五枚の萼がほとんど同じ形で交互になるように並んでおり、また品種によっては花弁と萼が全く違う色をしているため交互に並んだそれらはいっそ人工物のような印象に見えたりします。
 トケイソウという名は、三つに分かれためしべを時計の長針、短針、秒針になぞらえたものだそうです。その考え方の上では、細くぐるりと並んだ副冠も何となく文字盤のような印象を受けます。あまりに構造が複雑すぎて、何となく機械みたいな雰囲気を感じてしまうのかもしれません。
 英語ではこの複雑な花をキリストの受難を象徴するものとして、受難の花、すなわちパッションフラワーと呼びます。どう象徴するかはなかなか複雑なので調べていただきたく……
 ちなみに近縁種のクダモノトケイソウは果実が流通していたりします。パッションフルーツです。うーん、情熱のフルーツではなく受難のフルーツだったわけですね。


 今回あえて最後に持ってきた、やや身近に見られる中でもっとも私がその形を気に入っている花はカルミアです。
 学名のKalmia latifoliaのままで呼ぶのも味気ないので和名を紹介しておくと、アメリシャクナゲと言います。
 しかしその姿を見ると、日本育ちの自分としてはシャクナゲよりも桜の類、ヒメリンゴなんかを思い出します。細身の低木に小さめの白や薄紅色の花をたくさんつけている様子は、行儀よく育てられている小さなヒメリンゴに何となく似ています。
 先のトケイソウも写真無しでの説明難度がかなりのものでしたが、カルミアはその上を行く奇妙さをしています。
 とはいえ遠目に見る分にはまさに桜の仲間のような、かわいらしい小さめの花が並んでいるだけです。近づいて初めて、その珍妙さに驚かされることになります。
 まずそのつぼみに目を引かれます。金平糖にそっくりな、丸みを帯びたとげとげとした形をしているのです。花のつぼみとして想像するものとはかけ離れたその形状を見ただけでは、咲いたときにどんな風になるのかもまるで想像がつきません。
 いざ咲いている花を見ると、確かに遠目に見た時の印象通り、桜の仲間のような形に見えます。桜の仲間とは違ってすべての花弁が繋がっているので、大まかにラッパ状なのですが、しかしその形はよくよく見ればいわば上品なレースの傘のような様子をしています。
 傘(洋傘)というものは真ん中と端だけで支えられている形ではなく、その中間でも支えられているのもあって、包み込むようにお椀状に布が貼られているように見えます。
 カルミアの花もまさに中間あたりで支えられたような格好になっていて、そのおかげで傘のような形状になるのです。
 何に支えられているのかと見てみると、花の奥から伸びたおしべが花の内壁にちょうど刺さるようにして、傘の骨のようになっているのが分かります。細工物のように器用なことに、ちょうどおしべが収まるように花びらに小さなくぼみができているのです。
 実際のところはおしべが花弁を支えているのではなく、おしべを固定するために花弁にくぼみがあるような状態です。開花直後は自家受粉を避けるためにおしべを固定しておき、しばらく経ったら花弁が軟化してきておしべが花弁を離れ、自家受粉できるようにする……とかじゃないかなあと思っています。


 今回もやたらめったら書きまくってしまいました。
 読みづらくて恐縮です。
 何にせよとてもいい季節ですし、不要不急でない外出の際にでも、咲いている花を辿って歩いてみてはいかがでしょうか。