iPX社員によるブログ

iPX社員が"社の動向"から"自身の知見や趣味"、"セミナーなどのおすすめ情報"に至るまで幅広い話題を投下していくブログ。社の雰囲気を感じ取っていただけたら幸いです。

秋の植物ばなし

 はじめまして、新しく入社いたしましたmmと申します。
 植物関係の全く別業種からの転身になり、まだまだ至らぬところが山積みではありますが、毎日楽しく学びつつ働かせてもらっています。
 何卒よろしくお願いいたします。

 もと植物関係の人間ということで、今回は秋この頃の花のことでも話そうと思います。



 キンモクセイは皆さんご存知でしょうか。
 本当は写真を上げられると思っていたのですが今年はまだこの辺りでは咲いていませんでした。花芽は形成されて大きくなってきているので、もうしばらくのことだとは思うのですが。
 キンモクセイは秋ごろになると不意に立ち込める、ミカンを思わせるような甘い香りの主になります。甘く強い香りがするので、もし見たことがない人でも香り自体は知っていたりするかもしれません。
 中国の方ではこの香りを活かしたお酒やお茶もあります。中には「トイレの芳香剤のにおい」と例える方もいますが、そうした場面にも有用なほどに華やかでよい香りだということですね。
 
 キンモクセイはオレンジ色の小さな花を房のように咲かせる中木(小高木)で、その芳香と常緑性から庭木などにもよく利用されてきています。
 しかしこのキンモクセイ、日本ではほとんど果実を見ることがありません。
 というのも、輸入されてきて増やされたものがすべて雄木だからなのです。
 キンモクセイはもともと、ギンモクセイという白い花の木の変種にあたります。こちらは時折実っているのを見かけることができます。香りはキンモクセイよりは弱いですが、やや酸味もあり元気をもらえる香りでもあります。
 別変種のウスギモクセイというものも実を見ることができます。浜離宮などにも植わっています。

 同じように実を全く見ないこの頃の花というとヒガンバナもそうですね。ヒガンバナは遺伝子を一般的な生き物のように2組持つのではなく、3組持っているそうです。そのため遺伝子を均等に分けにくく、実ることがめったにないのです。それでもあちこちにヒガンバナが見られるのは、球根で増やしていったからということで……
 ではキンモクセイはどうやって増やすのか? と言いますと、実はヒイラギに接ぎ木することで増やすのだそうです。
 ヒイラギはキンモクセイの仲間なのです。

 とげとげしい葉を持つヒイラギはキンモクセイやギンモクセイと近しい仲間で、ギンモクセイとヒイラギの間にはヒイラギモクセイという雑種まで存在しています。
 立派な木に黒紫色の実をつけている姿を見ると結構圧巻です。

 ところで「クリスマスの飾りのヒイラギは赤い実をつけてなかったっけ?」と思った方もいるかもしれません。
 中には「ヒイラギって植え込みとかの低い茂みみたいな感じでは?」と思った方もいるかもしれません。
 その謎の答えはこうです。
「日本ではあのとげとげしい形の葉をもつものは全部『ヒイラギ』と呼んじゃう」

 もともと日本で「ヒイラギ」と呼ばれていたのは上記のキンモクセイの仲間のもので、これを節分飾りなどの魔除けとして使っていました。葉のとげは9個くらいから0個まで多様です。古い枝になるととげのない葉をつけやすくなるそうです。深い。
 クリスマスのヒイラギは「セイヨウヒイラギ」。全く違う種類です。意外ととげが少なく、葉の全容としてはどうも四角っぽい形になっています。
 茂みっぽいヒイラギはこれまた縁遠い「ヒイラギナンテン」です。二枚の葉が向かい合わせに付いて、枝全体を眺めると何となく鳥の羽のような風貌をしています。とげの数はやや多めの傾向ですが、葉が柔らかめで幅が細めなのでスリムな印象のものが多いです。とりわけ細い「ホソバヒイラギナンテン」もあるくらいです。

 ヒイラギと言うと柊と書くのですが、日本語に「ひいらぐ」という動詞があります。これは「疼ぐ」と書くそうで、つまるところ疼くようにひりひりと痛むことを言うそうです。
 つまり、触ったり分け入ったりしたらいかにも「ひいらぐ」であろう葉をしているものが「ヒイラギ」と呼ばれてきたという感じですね。

 キンモクセイから始まってヒイラギまで来てしまいました。これ以上迷子になる前に締めておきます。
 キンモクセイやギンモクセイは、中国で月に生えていると言われていた月桂の仲間だそうです。その芳香が良いという逸話からローレルをゲッケイジュと呼ぶのだそうで……
 モクセイの花の香りが月の香りだとするとそれはそれで雅だなあ、なんてことを思いながら、今年もあの香りが漂い出すのを心待ちにしています。